盆栽園店主と初心者のやりとり
とある盆栽園に盆栽を始めたばかりとおぼしき客がいました。
その客と店主のやりとりが聞こえてきました。
その客は完成樹に近い6,800円の樹を手に持っていました。
店「う~ん、それもいいんだけどね~」
「でもお兄さん、まだ始めたばかりだろう?」
「じゃあ、こういう樹、これなんかいいよ~」
「これ、カエデ、これをさあ、春にこうして少し寝かして植えるんだよ」
客「はあ・・」
店「このカエデは2,800円。安いだろ?」
「こういうのをいじって楽しむんだよ~」
客「はあ・・」
と大体こんな感じのやりとりでした。
「ああ、これ。自分も経験あるな~」
ぼくはそう思いながらそのやりとりを聞いてました。
盆栽を始めて1年目の頃、
同じようなことを言われて納得できなかったのを覚えています。
今となっては店主の言ってることも十分理解できるのですが、
初心者(当時のぼくもそうです)はどうしてすぐ飾れる樹に目がいきますからね~
逆にちょっと先の将来図を見据えて買えるのは、
もう初心者じゃないですから。
それに親切心でこれを買った方がいいよってアドバイスしても
初心者はそれを素直に受け取ることはできないんですよ。
「お前にはその樹はまだ早いから、
この安いのをやっとけ! ボケ、カス!・・」
というふうに聞こえるんです。
ボケカスはさすがに大袈裟だろうと思われるかもしれませんが、
ホント、そういうふうに聞こえるんです。
だからアドバイスされた初心者は、
「いや、やっぱりこれがいいです。大切に育てるんでこれください。」
みたいなズレた返答をしてしまうのです。
(※店主は大切にしろって言ってるんじゃないのに)
初心者には完成樹しか見えない-
これはしょうがないことです。
とある盆栽グループで、年を取ったベテランさんが
実生ばっかりやるという話を聞いたことがありますが
これも同じことです。
経験を重ねるごとに、完成から遠いところから始めるんです。
初心者は、完成に近いところから。
これが普通だと思います。
だから、初心者が高い完成樹を買うことを
それがダメなことのように咎めるのはどうかと。
買う方に長い目を要求するんじゃなくて、
買われる方(アドバイスする方)に長い目を持ってもらいたいなあと。
心配しなくても大丈夫。
最初は完成樹を買っていた客が
しばらくすると2千円のいじれる樹、遊べる樹を買い始めますから。
と、ぼくはそんなことを考えながら、
冒頭のやりとりを聞いていたのでした。
ところで冒頭の話に登場したお客さんは結局どうしたと思います?
6,800円の完成樹を買ったのか、
店主に言われた2,800円の素材樹を買ったのか?
悩んだ挙句、彼の出した答えは6,800円の樹でした。
いや、もしかしたら店主の手前、悩んだふりをしたのかもしれません。
ぼくは心の中で、「それで正解、正解」とつぶやきました。
【おまけ】
国風で見たケヤキ